原書は1942年に刊行されたブルーノ・ムナーリの傑作絵本の新装版。1972年発行の初翻訳時は『ナンセンスの機械』という独自の邦題がつけられていた本書には、ムナーリ考案の無意味な機械が動くための無意味に大掛かりな原理が、ユーモアたっぷりに描かれています。
例えば「発泡性ワインを下から開ける機械」に用いられているのは《南ドイツの有名なハト時計》、《小包みを手にしたパラグアイのウサギ》、《捕虫網》、《チリ製のリボルバー》で、これらがどのように作用してワインボトルを下から開けるのかをすんなりイメージできる方はいないでしょう(正解は「飛び出してきたハト時計のハトに驚いたウサギが落とした小包みが網の中に落ちることで繋がっていたリボルバーの引き金が引かれてワインボトルの下部を打ち抜く」でした……そもそもボトルにささったコルクを抜けばいいだけなのに!)。
一事が万事この調子で、他にも「留守中でも笛を吹くための機械」や「蚊を死ぬほど辱める機械」といった名前だけでも興味をそそる機械の数々が、カラフルでチャーミングなイラストとともに紹介されています。
ちなみに、先に例に挙げた「発泡性ワイン」の機械では、ウサギが持っている小包みの中身は「塩化アンチョビー混合の硫酸クラリネット」で、ワインボトルを置くのは「詰め物入りオリーヴがいっぱいに詰まった、ヴェネズエラの特色のある帽子の上」でなければならないのだとか。この細部まで徹底したナンセンスの世界をぜひとも堪能してください。
無意味なものをそのまま無意味なものとして受け取ることは、大人だからこその愉しみだとムナーリは教えてくれます。
大きさ::28.8x21.9 cm
出版年:2018
印刷:カラー
ページ: 32 pages