安部悠介「足跡幻想」

2024.4.2 (tue) - 4.14 (sun)
12:00-19:00 Closed on Mondays


安部悠介「足跡幻想」

画家・安部悠介による作品集『足跡幻想』(THREE SPACE)の出版を記念した展覧会を開催いたします。

本展では、作品集『足跡幻想』と、実際に収録された下敷き作品のほか、安部の最新の絵画作品を展示・販売いたします。
また、安部の過去作品をまとめたZINEやレアなステッカーなども販売予定。
THREE SPACEの関連書籍も会場にて販売いたします。




安部悠介「足跡幻想」
ED.200 (手製本)発行:THREE SPACE

安部悠介のアトリエに行った際、段ボールいっぱいの、絵から剥がされた下敷きを見せてもらった。その一枚一枚に、画面からはがれてしまったキャンバス目や繊維、絵の具、木片といったものが付着していた。
キャンバスやパネルに下敷きを貼るというあらたな表現の試行錯誤のなかで、”ただ剥がしただけに過ぎない下敷き”は、豊かな美しさを持っており、何年も前の筆致や閉じ込められたイラストが突然表に出てきたことで、不思議なマチエールと色彩が生まれていた。

安部の絵画作品からは、自分の絵を描くことへのこだわりが感じられた。少年的なモチーフや文房具を組み込むことは、伝統的な絵画表現から逸脱するような行為に思えた。しかしこれらの下敷きには、もっと普段の部分、彼の絵に向かう感覚そのものが見える気がした。絵を描くことの中で、今この瞬間なにが起きているのかを捉え、常に前に進もうとする、安部の絵画制作の態度がそこにはある。

 


絵で悩んでうまくいかなくてキャンバスから剥がした下敷き。あらためて見ると美しくて、振り返れば全部意味があったんだなと思うこととか。
突然目の前に現れたにすぎないけど、剥がして何年も前の層が見えたりしたとき、ああこんなこともあったな、と自分で驚いた。その時の感覚、絵に向かってる瞬間や、体験したことが、自分の中にありありと刻まれてる感じがしたから。友人が良いねと言ってくれて嬉しかったこととかも。自分にとってこの本は、ふと振り返ったときに気づく、絵に向かってきた足跡を目にするようなものだと思った。
それもまたいつしか見えなくなったりするけれど、忘れたわけではないのだなと。
そんな思いを込めて、『足跡幻想』と名付けました。

(安部悠介)

 展示企画:THREE SPACE

http://yusukeabe.com/