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ヒップな生活革命

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先日発売された佐久間裕美子さんの「ヒップな生活革命」を読みました。iPadとウェブで展開している雑誌「PERISCOPE(パラスコープ)」の編集長でもある佐久間さん。同じくPERISCOPEのディレクター山口優さんとともに、個人的にもいろいろお世話になっていて、尊敬するおふたりです。

今年の2月、久しぶりにNYへ遊びに行ったとき、山口さんがウィリアムズバーグからグリーンポイントにかけて、色々案内してくれました。この数年のうちにウィリアムズバークにはコンドミニアムが立ち並びすっかり様変わりしていたものの、コーヒーショップやカフェ、そして美味しいレストランも増え、ワイスホテルのようなユニークな施設が出来きており、町を歩いて心地よさを感じました。あの心地よさの根幹をなす精神が、「ヒップな生活革命」で理解できたような気がしました。

読んでいてなるほど、と思ったことは、リーマンショック、オバマ大統領の誕生と支持率低下、デトロイトの財政破綻等といった大きな歴史の流れと、ささやかな個人レベルでの意識改革、それが生み出す新しいムーブメントとの密接な繋がりでした。行政や社会にただただ失望するのではなく、自分で、もしくは身近な人たちとやってみようという精神。もちろんそれはリーマンショック以前からも存在したけれど、リーマンショック以降のアメリカのDIYのサービスやプロダクトは、個人的な印象ですが、とても洗練されているような気がしていて、それが「なにかしたい」「社会を変えたい」という理想だけでなく、「生活をどうしよう…」という切実さからもたらされたものであるとしたら、それはとても興味深いことだなと思いました。 ユトレヒトにいても、そのような変化は本を通して伝わってきたりします。Diner JournalやWILDER等といった食にまつわる雑誌が多く入ってきたり、Gottlund Verlagのようなユニークな個人出版社が注目を集めたり。

今年のTOKYO ART BOOK FAIRのメインビジュアルも担当しているニコラス・ゴットランドが主宰するGottlund Verlagは、ペンシルヴァニアのカッツタウンが拠点。ニコラスと彼の父親が20世紀初頭に建てられた納屋を改装したアトリエで活版印刷や製本を行うほか、国内の印刷所との共同作業、ときにはカッツタウンで父親の家族が運営する印刷所で印刷を行うこともあるという、ローカルかつDIY精神溢れた出版社。日本の作家では、野川かさねさんの写真集なども出版していました。手作りのDIY感と、たしかな職人技による洗練された佇まいをもつGottlund Verlagのアートブックたち。ニコラス・ゴットランドはフェアにあわせて来日も予定しており、会場には彼らの書籍も並ぶはず。ぜひ、手に取ってみてください。

話がそれてしまいましたが、日本に目を向けると、たとえば最近では「疾駆/chic」が、地方の暮らしに目をむけながら、生活をとりまくささやかな事象を伝える丁寧な紙面作りをしています。雑誌「here&there」を個人編集で発行し続けけてきた林央子さんの「拡張するファッション」が大規模な展示として美術館を巡っているのも象徴的です。(自分のことで恐縮ですが)森栄喜さん・川島小鳥さんらと僕とで始めたOSSUも、日本にこのような雑誌がないという閉塞感から、「じゃあ僕らでつくっちゃおう!」と言いスタートしました。ユトレヒトで不定期でコーヒーを入れてくれているL PACKは、コーヒーの香りに包まれたささやかなコミュニティーを、さまざまな場所で即興的に作り上げてゆきます。

THE TOKYO ART BOOK FAIRを見ていても、何かを作りたいという人たちが生み出す盛り上がりは、どんどん多様な広がりを見せ続けています。売り手=作り手のみなさんが、楽しそうにしているのも、見ていてとても嬉しくもあります。 そのTOKYO ART BOOK FAIR、ブース出展のお申込締切がいよいよ7/31(木)に迫ってきました。アーティストブックを作っている方、ぜひ、アーティストブックを取り巻く熱気を、会場で売り手として感じてみてはいかがでしょうか。   宮城