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【拡散希望】注釈ブームがやってきた【同意したらRT】

ご存じの通り注釈ブームが来ています。

昨年、『城の崎にて/注釈・城の崎にて』(発行:NPO法人 本と温泉)という書籍の編集と執筆に関わりました。
志賀直哉の『城の崎にて』って有名な割には本当に短い話で、文庫本にしたら16ページもありません。
ざっくり内容をまとめれば、

「志賀直哉が電車にはねられてケガをして、療養のために城崎温泉に行って、ヒマなので川辺で石を投げたら、イモリに当たって死んでしまった。」

ってそれだけの話。
それがなぜ名作と言われるのか、そもそも何を言いたいのか、ということを時代背景やらその時々の彼の心情やら、しつこいくらいに注釈を加えて、注釈だけでも読み物として成立することを目指した80ページの「注釈・城の崎にて」と、元の「城の崎にて」の2冊を箱入りにしたのが『城の崎にて/注釈・城崎にて』です。こちらでぜひ

そのアイデアの元になったのが、Rap Geniusというウェブサービス。略語やスラングの多いラップのリリックに、みんなで注釈を入れて、わかりやすく解説するサイト。テキストはもちろん画像や動画の注釈も入れられ、さらにはラッパー本人が自作に注釈を入れたりするなど、かなりの盛り上がりを見せています。
Rap Geniusの文学版、Poetry Geniusもいい感じで、「グレート・ギャツビー」みたいな古典名作なら全文を、「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」みたいな近作なら、抜粋文に注釈を入れるなどで、著作権的な部分は解決しているようです。

ここまで書いたらもうみなさんも注釈ブームに同意してくれていると思いますが、もしまだの人がいるならば、
例えば、人気のBoketeってサービスも、元の画像に注釈を入れることで新しい意味を持たせる、っていう注釈サービスだということができます。
食べログはレストランに注釈入れるサービスだし、価格コムは製品に注釈入れるサービスだし、ナタリーはみんなが注釈を入れやすいようにカルチャーネタを提供するニュースサイトだし、ってほら、なんでも注釈サービスに見えてきます。

もっと言うなら、最近良く見る、記事のタイトルに【拡散希望】【同意したらRT】みたいなことをつけるのも、内容ではなくて、読んだ後の行動を指定する新しいタイプの注釈と言うこともできます。(僕はあまり好きじゃないけど。。)

コンテンツを0から生み出すのではなくて、元々あるものに何かを加えてより良くしていく、という考え方は、よく知らないけどGitHubっぽいというか、インターネット的だと言えます。

ここまで書いてやっと本題。
友人の神谷さんが最近はじめたサイトが、その名も「注釈」を意味する「annotation」。青空文庫収録の日本作家の名作を中心に30作品を選び、すでに1000以上の注釈を個人でチマチマ付けたという労作です。
太宰治の「グッド・バイ」の冒頭、「二人の男が相合傘で歩いている」の一文に、前年のヒット曲、ディックミネの「夜霧のブルース」の歌詞の中から、「男同士の相合い傘は嵐を呼ぶ。」を挙げて、波乱の物語の前触れとする注釈には、なかなかやるじゃんかと思いました。

その「annotation」が主催する、「宮沢章夫と読む」というイベントが、2014年5月14日(水)に千代田区立日比谷図書館で開催されます。

著書『時間のかかる読書』(河出書房新社)では、横光利一の短編『機械』を11年かけて読み倒すという注釈界のレジェンドを打ち立てた宮沢さんが、何を読むのか、そもそも2時間でイベントは終わるのか、興味の尽きないところです。

僕も覗いてみようと思っています。

江口